日本の音楽(歌舞伎)
歌舞伎
江戸時代の庶民の間で生まれ発展した総合舞台芸術。のちに「かぶき」に歌(音楽)・舞(舞踊)・伎(演技)の字をあてた。
歴史
歌舞伎のもっとも古い記録は、1603年、出雲の阿国による「かぶき踊り」で、その大当たりを契機として遊女歌舞伎が流行したが、風紀を乱すとの理由で禁止されると、少年による若衆歌舞伎がはやり、さらにその禁止後、今度は野郎歌舞伎として新たに出発することになった。
重要単語
- 出囃子・・・演奏形態からみて、舞台上の雛壇で観客から演奏者が見えるようなかたちで演奏されるものを出囃子という。
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黒御簾音楽・・・出囃子に対して舞台の陰で効果音楽として演奏される音楽を、黒御簾音楽、下座音楽という。
参考文献
久保田慶一 他 『音楽用語の基礎知識――これから学ぶ人のための最重要キーワード100』 東京:アルテスパブリッシング。
音楽のしくみ(多調性)
多調性
楽曲の旋律や和声を書くさいに、異なる複数の調を同時にもちいること。そのうちとくに、2つの調を同時にもちいる場合は復調性とよばれる。20世紀前半の音楽に数多くみられ、調整と無調の中間的な現象ともとらえられる。
豆知識 基本的に1つの調による構造をもつ音楽において、音色的な彩りとして他の調が重ねられると、同様に多調現象が生じるが、これは本質的な多調性ではない。
代表的な例
ペトルーシュカ調・・・I.ストラヴィンスキー:《ペトルーシュカからの3楽章》で使われる。ハ長調と嬰ヘ長調の主和音をぶつけたもの。
参考文献
久保田慶一 他 『音楽用語の基礎知識――これから学ぶ人のための最重要キーワード100』 東京:アルテスパブリッシング。
音楽のしくみ(日本音楽の理論)
日本音楽にとっての理論
音楽を分析的・理論的にとらえようとする視点は、日本音楽の歴史においてあまり一般的でなかった。また律呂という語が主として雅楽において、また序破急という語が主として能楽においてもちいられたが、それぞれの種目のなかでもちいられる理論用語が、必ずしも種目をこえて共通に音楽を説明するのに適した用語であるとはかぎらない。
おもな日本音楽の理論用語
十二律・・・1オクターブを12に分割したときの個々の音を絶対音で示したものである。わが国の音律にかんする理論は、中国の音楽理論が輸入され大きな影響を受けたが、平安時代には日本独自の十二音律名が考案された。
三分損益法・・・中国から伝来した音律計算の方法である。基準となる管の長さを3等分にして、その1つぶんを減じると、完全5度上の音が得られ、その長さを再び3等分して1つぶんを加えると、完全4度の音が得られる。それを繰り返して音律がさだめられる。
日本音楽の音階理論
- 音階理論分析の歴史
日本音楽の音階理論について科学的・分析的に研究した最初は、上原六四郎『俗楽旋律考』(1895)である。その後、田辺尚雄、中山晋平、町田佳聲(嘉章)、下総皖一らによる多くの研究があらわれた。小泉文夫は『日本伝統音楽の研究1』(1985)において、それらを批判的に継承し、日本音楽の音組織・音階について実証的にろんじて日本の音階理論を確立した。
- 日本音楽の基本音階
これらの音階は、4度の枠であるテトラコルドが結びついてできている。テトラコルドの両端の音は核音といい、比較的安定した音で、終止音になる。核音のあいだにはさまれた中間音は、比較的動きやすい音で、中間音が下がることにより、たとえば律のテトラコルドから都節のテトラコルドへといった変化も起こりやすい。
参考文献
久保田慶一 他 『音楽用語の基礎知識――これから学ぶ人のための最重要キーワード100』 東京:アルテスパブリッシング。
音楽分析(修辞学的分析)
修辞学
読者や聴衆に感動をあたえるために、もっとも有効に表現する方法を研究する学問。 ルネサンスの音楽理論家は、楽曲の形式や音楽技法を説明する音楽独自の用語が当時存在しなかったために、修辞学をもちいて音楽理論を構築しようと試みた。
修辞学的分析の主要文献
- ガルス・ドレスラー『音楽創作論』(1563)・・・修辞学の考え方や用語をもちいて、楽曲の構成を「開始部」「中間部」「終止部」の3部分に分けて説明した。
- ヨアヒム・ブルマイスター『ムシカ・ポエティカ』(1606)・・・音楽フィグール(文体上の「あや」、あるいは比喩的表現)を体系的に論じ、形式構造にたいする意識、とくに対比の役割と対比的な部分間の連結にたいする意識を喚起したことで、17ー18世紀のドイツの「音型論」に大きな影響をあたえた。
参考文献
久保田慶一 他 『音楽用語の基礎知識――これから学ぶ人のための最重要キーワード100』 東京:アルテスパブリッシング。
音楽のしくみ(リズム)
リズム
音(音符)と沈黙(休符)の長短(場合によっては強弱も)の継時的な配列によってかたちづくられる音型のことである。
豆知識
- 一般的には、旋律・和声・リズムが「音楽の3要素」であるなどといわれているが、旋律や和声にはそれぞれ音や和音の継時的な連なりであるから、とうぜん、そのなかにすでにリズムの要素が含まれている。
- 旋律や和声のない音楽は存在しうるが、音楽が時間経過のなかに存するものである以上、リズムのない音楽はありえない
音楽の中でのリズムの役割
西洋音楽の場合、音階、旋法、和声の各理論にもとづいた音高の表現とともに、リズムは音楽の運動エネルギーをつかさどる重要な要素となる。また音楽の性格的表現の要素を直接的にになうものでもある。
作品例 L.v.ベートヴェン 交響曲第5番作品67(運命)の冒頭リズム
M.ラヴェル 《ボレロ》 小太鼓の連続的に演奏される同一のリズム音型
シンコペーション
拍節をもつ音楽において、絶対的な弱拍(または拍の弱部)とそれに続く強迫(または拍の強拍(または拍の強部)の音をタイで結ぶことにより、ほんらいのアクセントを前倒しされたリズムをシンコペーションという。
クロス・リズム
曲中において、その曲がほんらいもっている拍節構造とは異なる構造のリズム音型をばらすことを、クロス・リズムという。4分の3拍子の曲のなかで8分の6拍子のリズムや2分の3拍子構造のリズムはその典型例である。また、異なる拍節構造のリズムどうしが顕在的に同時に鳴らされる状態を、ポリリズムという。なお、クロス・リズムやポリリズムにおいて、対立するリズムの拍節の仕組みが3:2の長さの関係にある場合には、それをヘミオラとよぶ。
作品例 J.ブラームス 交響曲第2番 ニ長調 作品73 第1楽章(クロス・リズムとポ リリズムが使用されている作品)
マルティメトリック・リズム
20世紀音楽の多くに特徴的にみられる。これは、拍節構造(拍子)がつねに変化するなかで構築されるリズムである。
和声リズム
和音の変わるタイミングをさす。必ずしも顕在的な音型としてあらわれるわけではなく、潜在的なリズムで、音楽の心理的律動をつかさどる。
作品例 J.s.バッハ 《平均律クラヴィーア曲集》 ハ短調フーガ BWV847のプレストになる箇所
参考文献
久保田慶一 他 『音楽用語の基礎知識――これから学ぶ人のための最重要キーワード100』 東京:アルテスパブリッシング。
音楽のしくみ(拍・拍節・拍子)
拍
音楽のなかで一定の時間間隔で潜在的に刻まれるもので、その音楽の時間経過にかかわる現象(リズムなど)を律する基本単位となるものをさす。
拍節
連続して刻まれる拍が、一定の周期で心理的な強弱のパターンをもつこと
拍子
拍節による音楽を書くさいに、1拍の単位となる音符や、拍節の周期と小節との整合をさだめ、体系化したものである。現在の記譜法では、1拍の単位音符を分母に、1小節の拍数を分子にした分数で示す。
拍子の種類
分子に使われる数字により、単純拍子、複合拍子、変拍子の3種に大別できる。
- 単純拍子・・・2拍子、3拍子、4拍子
- 複合拍子・・・3拍子の積によってなりたっている拍子で、6拍子(3拍子×2)、9拍子(3拍子×3)、12拍子(3拍子×4)
- 変拍子・・・5拍子、7拍子などがあり、このうち、5拍子=2拍子+3拍子というように単純拍子の和によってなりたっているものを混合拍子、そうでないものを特殊拍子という
弱起(アウフタクト)
楽曲がその拍子の第1拍目以外から始まっている場合のことをいう。冒頭の小節は拍子として不完全な時間量となるが、曲の最終小節を冒頭小節のぶんを差し引いた長さにして整合されるのが通例である。これらの小節を不完全小節という。
参考文献
久保田慶一 他 『音楽用語の基礎知識――これから学ぶ人のための最重要キーワード100』 東京:アルテスパブリッシング。
楽器(電子楽器)
定義
電子回路によって発音する楽器を総称して電子楽器という。エレクトリック(エレキ)・ギターなどのように、伝統的な楽器と同じ発音原理で出した音を電気式のピックアップで拾い、アンプやスピーカーで拡大するしくみのものとは電気楽器とよび、電気楽器には分類しない。
歴史
世界初の電子楽器は、1906年にアメリカのケイヒルが制作したテルハーモニアムであるとされている。これは1種の電子オルガンであるが、家1軒分もある巨大なものだった。
1920年にロシアのL.テルミンが全く新しいタイプの電子楽器を発明した。四角い箱からアンテナが2本出ており、このアンテナに手を近づけたり遠ざけたりすることにより、発音・音高の変化・音量の調整などをおこなう。今では発明者の名前をとってテルミンとよばれる。
1928年にフランスのM.マルトノが発明したオンド・マルトノは鍵盤での演奏もできるが、リング(コードのついた指輪)を指にはめて操作すると、ポルタメントを書けることができる。1947年にパリ国立舞踊音楽院にオンド・マルトノが設置されたほか、O.メシアンの《トゥランガリラ交響曲》などの作品でも使われている。
電子オルガンでは、アメリカの時計制作者だったL.ハモンドが、1935年にハモンド・オルガンを発表し、一時代を画した。日本では1950年代末から生産・販売された。
最初のシンセサイザーは、1955年にアメリカで発表された。これは、電子回路によりさまざまな電気信号を合成し、アンプとスピーカーを通して発音する機械である。
1964年アメリカのR.モーグがトランジスタをもちいた大量生産向きの装置を開発した。
参考文献
久保田慶一 他 『音楽用語の基礎知識――これから学ぶ人のための最重要キーワード100』 東京:アルテスパブリッシング。