音楽のしくみ(リズム)
リズム
音(音符)と沈黙(休符)の長短(場合によっては強弱も)の継時的な配列によってかたちづくられる音型のことである。
豆知識
- 一般的には、旋律・和声・リズムが「音楽の3要素」であるなどといわれているが、旋律や和声にはそれぞれ音や和音の継時的な連なりであるから、とうぜん、そのなかにすでにリズムの要素が含まれている。
- 旋律や和声のない音楽は存在しうるが、音楽が時間経過のなかに存するものである以上、リズムのない音楽はありえない
音楽の中でのリズムの役割
西洋音楽の場合、音階、旋法、和声の各理論にもとづいた音高の表現とともに、リズムは音楽の運動エネルギーをつかさどる重要な要素となる。また音楽の性格的表現の要素を直接的にになうものでもある。
作品例 L.v.ベートヴェン 交響曲第5番作品67(運命)の冒頭リズム
M.ラヴェル 《ボレロ》 小太鼓の連続的に演奏される同一のリズム音型
シンコペーション
拍節をもつ音楽において、絶対的な弱拍(または拍の弱部)とそれに続く強迫(または拍の強拍(または拍の強部)の音をタイで結ぶことにより、ほんらいのアクセントを前倒しされたリズムをシンコペーションという。
クロス・リズム
曲中において、その曲がほんらいもっている拍節構造とは異なる構造のリズム音型をばらすことを、クロス・リズムという。4分の3拍子の曲のなかで8分の6拍子のリズムや2分の3拍子構造のリズムはその典型例である。また、異なる拍節構造のリズムどうしが顕在的に同時に鳴らされる状態を、ポリリズムという。なお、クロス・リズムやポリリズムにおいて、対立するリズムの拍節の仕組みが3:2の長さの関係にある場合には、それをヘミオラとよぶ。
作品例 J.ブラームス 交響曲第2番 ニ長調 作品73 第1楽章(クロス・リズムとポ リリズムが使用されている作品)
マルティメトリック・リズム
20世紀音楽の多くに特徴的にみられる。これは、拍節構造(拍子)がつねに変化するなかで構築されるリズムである。
和声リズム
和音の変わるタイミングをさす。必ずしも顕在的な音型としてあらわれるわけではなく、潜在的なリズムで、音楽の心理的律動をつかさどる。
作品例 J.s.バッハ 《平均律クラヴィーア曲集》 ハ短調フーガ BWV847のプレストになる箇所
参考文献
久保田慶一 他 『音楽用語の基礎知識――これから学ぶ人のための最重要キーワード100』 東京:アルテスパブリッシング。