音楽のしくみ(日本音楽の理論)
日本音楽にとっての理論
音楽を分析的・理論的にとらえようとする視点は、日本音楽の歴史においてあまり一般的でなかった。また律呂という語が主として雅楽において、また序破急という語が主として能楽においてもちいられたが、それぞれの種目のなかでもちいられる理論用語が、必ずしも種目をこえて共通に音楽を説明するのに適した用語であるとはかぎらない。
おもな日本音楽の理論用語
十二律・・・1オクターブを12に分割したときの個々の音を絶対音で示したものである。わが国の音律にかんする理論は、中国の音楽理論が輸入され大きな影響を受けたが、平安時代には日本独自の十二音律名が考案された。
三分損益法・・・中国から伝来した音律計算の方法である。基準となる管の長さを3等分にして、その1つぶんを減じると、完全5度上の音が得られ、その長さを再び3等分して1つぶんを加えると、完全4度の音が得られる。それを繰り返して音律がさだめられる。
日本音楽の音階理論
- 音階理論分析の歴史
日本音楽の音階理論について科学的・分析的に研究した最初は、上原六四郎『俗楽旋律考』(1895)である。その後、田辺尚雄、中山晋平、町田佳聲(嘉章)、下総皖一らによる多くの研究があらわれた。小泉文夫は『日本伝統音楽の研究1』(1985)において、それらを批判的に継承し、日本音楽の音組織・音階について実証的にろんじて日本の音階理論を確立した。
- 日本音楽の基本音階
これらの音階は、4度の枠であるテトラコルドが結びついてできている。テトラコルドの両端の音は核音といい、比較的安定した音で、終止音になる。核音のあいだにはさまれた中間音は、比較的動きやすい音で、中間音が下がることにより、たとえば律のテトラコルドから都節のテトラコルドへといった変化も起こりやすい。
参考文献
久保田慶一 他 『音楽用語の基礎知識――これから学ぶ人のための最重要キーワード100』 東京:アルテスパブリッシング。