音楽君のブログ

西洋音楽に関係のある語句紹介をしています。

音楽の演奏形態(鍵盤音楽)

定義

パイプオルガン、クラヴィコードチェンバロ、ピアノ(フォルテピアノ)などの鍵盤音楽によって演奏される音楽。

歴史

 ルネサンス時代から声部ごとに別々に記譜されていた多声声楽曲が、鍵盤楽器用の2段譜表やリュートのタブラチュアに書きなおされたことが鍵盤音楽の起源だ。この編曲をインタボラトゥーラといい、声楽曲からのたんなる編曲にとどまらず、楽器の特性を考慮し結合させることを意図していた。

 16世紀になると多くの器楽曲が作曲され、シャンソンからはカンツォーナが、モテットからはリチェルカーレが生まれた。リチェルカーレは模倣を手法とするフーガの前身となった作品で、G.A.フレスコバルディやJ.P.スヴェーリングによって多くの鍵盤音楽が書かれた。

 バロック時代には、チェンバロ通奏低音楽器としてだけではなく、独奏楽器としてもちいられ、鍵盤音楽の発展に大きく寄与した。また、器楽合奏の形式であったソナタも鍵盤音楽作品にとりいられ、D.スカルラッティは600曲にもおよぶチェンバロソナタを作曲した。フランスでは、オルドルと名づけられた、舞曲に由来するフランス独自の趣味と魅力をともなった組曲が好まれ、L.クープランの作品が大きな影響を与えた。ドイツではJ.Jフローベルガーがリュート組曲やフランスの組曲の影響のもとに組曲のジャンルを体系づけた。ドイツではこの時期、オルガンが大規模化して音色(ストップ)と音量が豊かになり、北ドイツのリューベックでは、D.ブクステフーデによってオルガンのための前奏曲とフーガという組み合わせの作品が多く作られた。

 18世紀になると、単純で明確なホモフォニーの様式が好まれるようになった。イタリアでは、華麗に装飾された旋律にたいして、簡単な分散和音の伴奏(アルベルティ・バス)がつけられたギャランド様式が好まれた。古典派においては、組曲はもはや時代の趣味に一致せず、かわりにソナタが鍵盤音楽の中心になり、ヴィ―ンで活躍したJ.ハイドン、W.Aモーツァルト、L.v.ベートヴェンによってピアノソナタは高度に芸術的な作品となった。

 19世紀におけるピアノの改良とともに、ピアノ表現の可能性が増大し、F.F.ショパンやF.リストのようなヴィルトゥオーソの演奏家の手による演奏技巧に趣向をこらした作品がもてはやされた。ソナタ形式は拡大され、大規模なピアノ協奏曲が生まれた。家庭における音楽愛好家のための新しいピアノ音楽の需要も生じ、しばしばロマン派特有の音楽外の思想や情感、さらには標題と結びつく自由な小形式の作品、キャラクター・ピースが生まれた。

 

参考文献

久保田慶一 他 『音楽用語の基礎知識――これから学ぶ人のための最重要キーワード100』 東京:アルテスパブリッシング。